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彼は大声で私の言葉を遮ると、真っ直ぐ目を見つめてきた。
「そうやって強がって無理に笑うな」
強がって笑っていたことをすぐに見抜かれた。
「あと・・・、買い込むぐらいに服はあんたにとって大事な物だろ?売ったら駄目だ」
「でも、お金ないから売らないと」
俯く私の腕を彼は強く握るので彼を見上げる。
「お金と、・・・家もないよな?」
こうストレートに聞かれると辛いが本当のことだ。私は頷く。
そしてしばらく間が空いたあと、彼はぼそっと呟く。
「じゃあ、ここにいればいい」
私は驚いて彼を見つめると視線を逸らされる。
「ここにいれば。何かあんたのこと放っておけない」
何故かちょっとキュンときてしまった。だがその後の発言にむっとする。
「ホテルとか探すの下手そうだし、探してる間にまた倒れてそうだし」
「・・・私、そんなに弱くないし」
「あと、それも気になる」
私の発言を無視し、彼は私の小銭入れを指差す。
「俺、修理屋だから。そのほつれ気になる」
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