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「どれ、って?」
「幻覚とか兵器とか。ちな、いまの推しはダンゼン宇宙人なんだけど」
またたく間に広まった巷談の中で、どの説を取り上げるべきかを問うたようだ。
ぱっと思いつくものはいくつでもあるが、充はすぐには答えなかった。
「……わかんない。まだ、情報が少なすぎるし。なんとも言えないよ」
「だから良いんじゃんか! 真実が知れる前の混沌だからこそ、意味不明な陰謀論も摩訶不思議なトンデモ科学も楽しめるの!」
どうせ祭はすぐ終わるんだからちゃんと楽しめと、気楽な友人は忠告する。
その精神構造は充には度し難いものでもあり、羨ましいものでもあったが。
この現状を楽しもうとは、どうにも思えなかった。
座席が階段状になった大講義室には、数個の学生グループが昼食を楽しんでいる。
そして、その人口を超えるくらいの幽霊が、そこかしこの空中に浮いていた。講義室の壁をすり抜け、何人も出入りしている。
現実として楽しむには、現状はあまりに、非現実じみていたのだ。
「あ」
二個目のハンバーガーの包装紙を捲ろうとするヨシミツの背後から、身体をすり抜けて男の幽霊が充に近づく。
「ん? どしたの」
「えっ。あー、いや……」
身体をよじって幽霊を避けながら、充は去っていくその姿を見送った。
ヨシミツは、そんな充の姿を不思議そうに伺いながら、ジャンクフードを細い身体に詰めていく。
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