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今からおよそ1ヶ月のことだ。一華は朝早くに起き、白米に味噌汁、サラダ、ハムエッグまで3人前用意し、リビング中央に置かれたテーブルに運ぶ。杉雄と結婚してから約5年。毎日似たようなことを繰り返し生活している。料理に使った調味料を片そうとキッチンに戻ると、寝室へ続く廊下から足音が聞こえた。杉雄が起きてきたのだ。
「杉雄さん、おはよう。」
「うん」
目も合わせずそっけない返事を返した杉雄は、キッチンで調味料を片す一華に興味を示すこともなく、無言でテーブルの上の朝食に手をつける。それからすぐに喜美恵も起床し、テーブルにつく。杉雄が無言で朝食をとっているのに対し、喜美恵は口うるさく食事への文句を垂れていた。
「なんだい、殆どただ焼いただけ、切っただけの簡単なものじゃないか。この前なんか味噌汁もレトルトのやつだった。一華さん。あんた、専業主婦なんだから家事くらい手を抜かずやりなさいよ。」
「お義母さん、すみません…」
「まったく… 最近の女は… 杉雄、あなたはどう思ってるの?」
「うん、まぁ、どうでも。」
杉雄はそのまま黙々と朝食を食べ進め、嫌いな豆腐だけを残して全てを平らげると寝室へ向かう。出勤の準備をするのだろう。杉雄は喜美恵がかつて社長を務めていた会社で働いている。名ばかりの役員だ。
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