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「さっき、命はとらないって言ったじゃん。あれが嘘だから。騒がれたら困るから」
杉雄は声にならない悲鳴をあげ、逃げようとするも、当然まともに逃げられない。
「なに? まさか怒ってるの? 私が嘘をついたから? …先に裏切ったのはそっちなのに?」
杉雄の目隠しが湿っていく。恐らく泣いているのだろう。
「…泣いても無駄」
一華は杉雄の頭の上に向け、勢いよく短刀を横に振った。杉雄の髪の毛は少し短くなった。杉雄はまた声にならない悲鳴をあげた。
「すぐに殺すと思った? そんなわけないじゃん。そんなの、生温いよ。あんたにはもっと怖がってもらわないと。裏切られた人間が、どんな思いになるのか、知ってもらってから死んでくれないとさ」
一華はその後も髪や服など、怪我をしない箇所を思い切り切りつけたり、多く出血しない程度に体に傷をつけたりした。短刀を振る音が聞こえるたびに怖がっていた杉雄は、今やまばらな髪と、殆ど切れた服をまとい横たわっている。恐怖が限界に達したのだろう。
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