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第37話
一華は杉雄の頭に向け、短刀を勢いよく振り下ろす。あと少しで命中しそうなその時、玄関の方から声が聞こえた。
「待ってください!」
一華は手を止め振り返る。すると、そこには青乃介の姿があった。
「…菫?」
「白草さん! 待ってください!」
「…あんた、どうしてここに?」
一華は不思議そうな顔で問いかける。すると、青乃介の後ろから、ふちが黄色の眼鏡をかけた男が入室してきた。
「…その男は?」
「兄です」
「そう。どこかで見た気がする。それで、気持ちは伝わったの?」
「はい」
「そう。それはよかった。でもどうしてここへ? もう私とあんたが会う必要はないはずじゃ?」
「…」
青乃介は黙り込む。代わりに黄助が答えた。
「こいつは、あんたが過ちを重ねるのを止めてやりたいんだとよ」
「…は?」
「まぁ、聞いてくれ」
黄助は少し前に起きた出来事を一華に話し始める。はじめての兄弟喧嘩の末に、和解し、抱き合った直後の話だ。
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