第37話

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「ごめん… 青乃介、ごめんな…」 「兄さん… ありがとう。戻ってきてくれて」 「ああ… ごめんな、もう離れない」  しばらくの間、2人は涙を流しながら抱き合う。しばらくして、青乃介はあることを思い出した。 「あ!」 「? どうした、青乃介」 「すっかり忘れてた。今日、ここで兄弟喧嘩をするために背中を押してくれた人が、今とんでもないことになってるんだ」 「それは誰だ?」 「…この人」  青乃介はスマホでネットニュースを開いて見せた。一華の脱獄が報じられた記事だ。 「夫を殺しかけた殺人鬼… 白草 一華… 少し前に話題になってた女じゃないか」 「うん。実は、ちょっとした事故から、さっき渡したチケットは、この人が逮捕直前に持ってた荷物に紛れてしまったんだ。それで、この人の復讐に手を貸す代わりに、チケットを返してもらった」 「俺にお前の気持ちを示すために… すまない…」 「それはいいんだ。ただ、このチケットのために、取り返しがつかないことをする人が出て欲しくないし、僕もそれに加担したくない」 「ああ。俺も同じ気持ちだ。それで、この女を止めたいんだよな?」 「うん」 「わかった。いる場所はわかるのか?」 「うん」 「よし、すぐに行こう」  2人は青乃介が乗ってきた車に乗り込む。青乃介は小声でまだ殺さないでくれよと呟き、エンジンをかけた。
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