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「ごめん… 青乃介、ごめんな…」
「兄さん… ありがとう。戻ってきてくれて」
「ああ… ごめんな、もう離れない」
しばらくの間、2人は涙を流しながら抱き合う。しばらくして、青乃介はあることを思い出した。
「あ!」
「? どうした、青乃介」
「すっかり忘れてた。今日、ここで兄弟喧嘩をするために背中を押してくれた人が、今とんでもないことになってるんだ」
「それは誰だ?」
「…この人」
青乃介はスマホでネットニュースを開いて見せた。一華の脱獄が報じられた記事だ。
「夫を殺しかけた殺人鬼… 白草 一華… 少し前に話題になってた女じゃないか」
「うん。実は、ちょっとした事故から、さっき渡したチケットは、この人が逮捕直前に持ってた荷物に紛れてしまったんだ。それで、この人の復讐に手を貸す代わりに、チケットを返してもらった」
「俺にお前の気持ちを示すために… すまない…」
「それはいいんだ。ただ、このチケットのために、取り返しがつかないことをする人が出て欲しくないし、僕もそれに加担したくない」
「ああ。俺も同じ気持ちだ。それで、この女を止めたいんだよな?」
「うん」
「わかった。いる場所はわかるのか?」
「うん」
「よし、すぐに行こう」
2人は青乃介が乗ってきた車に乗り込む。青乃介は小声でまだ殺さないでくれよと呟き、エンジンをかけた。
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