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「杉雄さん、今日は何時頃帰ってくるの?」
スーツに着替え寝癖を直した杉雄に一華が訊ねる。
「そんなの仕事の具合次第だからわからないよ。適当な時間に飯用意しといて。」
「わかった…」
会社に向かう杉雄を見送る。杉雄が出て行き玄関のドアが閉まった頃、一華の背後から喜美恵が忍び寄り声をかける。
「一華さん、あなた、そんなところで突っ立っている暇があるなら家事のひとつでもしたらどうなの? うちの息子の稼ぎでご飯が食べられているのだから、家事くらいしっかりやりなさい。」
「はい… すみません…」
喜美恵はそのまま自室に戻っていった。トイレに行く以外は夕食時まで部屋からは出てこない。一華は洗濯や皿洗い、掃除といった家事をこなしていく。冷蔵庫の食材がなくなっていることに気がつき、近所のスーパーへ買い出しへ向かう。食材をカゴに入れながら店内を歩き、ふと冷凍食品売り場のガラス戸に自分の顔が映っていることに気がつく。一華の肌は荒れていた。
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