第1話

6/6
前へ
/226ページ
次へ
「お怪我はないですか?」 「大丈夫です! すみません、そちらこそお怪我は大丈夫ですか?」 「大丈夫ですよ。これくらい。それじゃあ、僕はこの店に用があるのでこれで。」  男は店の中へと姿を消す。紳士的な男だ。身長も一華より15cmほど高いように見え、細身でスタイルが良い。着ているジャケットも高そうな生地だった。一華は少し目を惹かれながらも帰路に着く。予定よりも遠い店に行ったため、杉雄に帰りの時間を聞こうと歩きながらトートバッグの中を探った。すると鞄の中に自分のものではない手帳が入っていることに気がついた。きっと先程ぶつかったあの男のものだろう。一華はそう考えた。 「返しに行かなきゃ…」  そう思って踵を返し、スーパーへ向かう。しかしその道中、とんでもないものを発見してしまった。細い路地でキスをする2人の男女だ。男女の顔を少し覗いてみる。男の顔に一華は驚いた。 「…杉雄さん?」  …続く。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

665人が本棚に入れています
本棚に追加