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零
掛け時計の秒針が静かに時を刻む
真っ暗な部屋にかすかに日の灯りが差し込む頃
一人、少年は部屋の片隅でうずくまっていた。
「…なさい。…めんなさい。」
ブツブツと同じ言葉を繰り返しつぶやく。
日が昇り、鳥たちのさえずりが聴こえてきた。
そっと部屋のドアが開く。
「だいぶ落ち着いたか?東」
と青年が声をかける。
東と呼ばれた少年は青年を睨みつけるように見つめる。
「…どうして、助けたの?魅波」
東は一言そう言うと魅波と呼んだ青年から視線を逸らした。
「…。コーヒー入れてくる。」
魅波は、少し寂しそうな笑顔を浮かべた。
静かにドアが閉まる。
緩やかに時が刻まれてゆく。
今はまだ、このまま闇に沈んでいたい…。
東はゆっくり瞼を閉じて音を光を全てを遮るように眠りについた。
少しして再び、部屋のドアが開く。
そこには、ふたつのコーヒーカップを持った魅波が立っていた。
魅波は、部屋の真ん中に置かれた小さなテーブルにカップを置くと眠っている東をベットに寝かせる。
「ゆっくり、おやすみ。東」
その声は、優しくどこか冷たかった。
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