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 走って逃げてた先は屋上だった。  そこなら一人になれると思ったの。恥ずかしさに火照った身体を冷やすには丁度いいでしょ?  今朝のニュースで十数年振りだって言っていた。11月の東京の降雪。まるで私の18の誕生日を祝ってくれたような特別な日だったのに……。 「ここに居たのか。お前、逃げられるとでも思ってんの?」  堂島くんは私の事をわざわざ追いかけて来た。  私も購買で良く買うプリンを頬張って、彼はカップを屋上のコンクリートに放った。 「私、絶対にあなたの彼女になりませんから」 「は? 誰が彼女にするって言った? 勘違いすんなよ。ただ数発ヤらせろっつってんの」  軽音部のドラムのシンバル、陸上部のスターターピストルや誕生日のクラッカーとか、どれも似たようなものだと思う。堂島くんの頬をぴっぱたいた音は似たように乾いていた。  それがいけなかったのかな?  テメェって突然キレた堂島くん。屋上の鉄柵を蹴りつけて、恐怖で固まっている内に、私の初キスは、この最低な奴に荒々しく奪われていた。
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