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 夜、ネット配信のドラマを観ていると、お母さんから電話が掛かってきた。栄養あるもの食べなさいよとか、いろいろ言われているうちにクリスマスの話になって――。 『プレゼント、何かリクエストある?』 「……。お母さんが選んでくれたものなら、何でもいい。何でも」 『シューズとかはまだ大丈夫?』 「うん、まだ痛んでない。何でもいいよ」 『亜子? 頑張るのよ、お母さんもお父さんも応援してるから』 「ありがと――」  はぁ……。  通話を切ると、いつも出てしまうため息。お母さんは勘違いしている。K-POP系ダンサーを目指し邁進していた頃の私が今も変わらずにいるって。  しかし現実の私は……。  鏡に映る自分が大っ嫌い。  そこには北海道の実家に帰り一からやり直すことも出来ない臆病者が映ってるんだもの。肌色のカーテン、灰色の絨毯は味気ないよね。黒い髪は私の部屋よりももっと地味。  地味か……。  絵里や美沙が陰口を叩いることぐらいは知っている。化粧っ気もないし、黒ぶち眼鏡がそう思わせていることは分かっている。でも、そう偽っていないと、亜子だってバレてしまうから仕方ないんだ。  それに容姿なんて、もう気にしていない。気にする必要もないって言った方が正しいかも。ダンスのキレを左右するスタイルだって、評価して貰える相手がいなければ無意味。  アキレス腱に鈍い痛みを感じた。  冬だから、寒いからだよね。そう言い聞かせても、ベッドに横になっていただけで感じる痛みほど辛いものはない。どうあがいても、治らないって伝えてきているようで。 「お願い、治って」  労わるように摩っても自身の足は寡黙だった。  反して私が犯した1度の過ちは、お喋りみたい。いやってほど語り掛けてくるもの――。
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