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練習生をクビになり、マンションを出て行くあの日、麻里李は言った。
「亜子、ごめん。私がはっきり止めなかったから」
「麻里李の所為じゃない」
「ううん、私、亜子を待ってる。それまでデビューしない」
嘘付かないでよ!
誰がどう考えても嘘だ。練習生として道が開けば誰一人断りはしない。麻里李だってそうよ。
私はもうどうあがいても上手くダンスが踊れない女。要求通りに踊れないダンサーに誰が用があるっていうの?
でも、諦めきれないよ。
だから田舎に帰らずこうして両親に我儘言って東京に残っている。
こういうのを往生際が悪いっていうんだよね?
しってるけど、しってるけど。
ねえ、麻里李、もう二度と恋はしないと誓ったのに、恋に縋っている自分に腹が立つよ。だってそうでしょ? 恋に溺れれば忘れられるもの。
ねえ、誰か奪ってよ。
私の夢ごとすべて……。
恋活アプリを開いて見る。
この日もたった一人だけ「いいね」を貰った人から自分のプロフィールを覗いた履歴として足跡が付いていた。そう言えば、彼のプロフィールを読んでいなかったっけ?
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