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「黒ぶち眼鏡に黒髪に、紺色のセーラー服、地味さも極みも極み、ヤバくない?」
この日は小春日和のような陽気。上着は必要ない。机に座る私に声を掛けて来たのは獰犬こと堂島兼志くん。
11月にヤらせろって言われたあの日から2週間、12月に入っても、私は彼に絡まれ続けていた。絵里や美沙が遠目に私たちを観察している。それも見慣れた光景。
「根暗な印象に輪が掛かってる。ほらやるよ」
堂島くんがすっと出してきたのはたけのこの里だった。
「いりません!」
「断り方も地味……か」
私はこんな最低な奴でなかったとしても、元来不良っぽい男子は好きではない。ただ不良という括りには、茶髪だとか喧嘩が強いとかタバコを吸っているとかありきたりなイメージがあるけれど、堂島くんは少し違う気がする。
彼はアマチュアボクサーで、クリスマスの土曜日にこの夜名原高校の体育館で試合があるらしい。
私はそんな野蛮な競技、これっぽっちの興味もないけれど、ただ登校したての朝、下校時にも目に入ってくる。真剣な眼差しでグラウンドを走る彼の横顔は、不良なんて呼ぶには失礼すぎて、少し、胸がチクリとした。
なんだろう……この気持ち。
分かってるよ。
何かに一途に打ち込んでいる様が眩しくて苦しくなるんだ。
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