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恐ろしい命令
街中が騒ぎを聞きつける前に、なんとしてでも捕まえなくてはいけない。航は席を立つと、さっさと代金を机の上に置いて店を出た。
「奴の動く最高速度は、時速270キロメートル。この街の広さからして、街の外に出るまであと2時間47分と予測される」
ぼそりと呟き、航はより一層はやく歩を進めた。
店の外には、普段と何一つ変わらぬ風景が広がっている。道を行き交う人は誰ひとり、今も危険が自分の身に降りかかるかもしれないということを知らない。
俺は、この平和な風景を守らなくてはいけないのだ。
航は拳を強く握りしめると、走り出した。奴を捉えるために。安寧と平穏を打ち破る、制御不能の怪物を駆逐するために。
自分にしか果たせない任務は、もう始まっている。
***
ミソギ町は、中心部に巨大なビル──川技研究所がそびえ立つ、小さな町だ。
しかし、その研究所は生物学や遺伝子組み換えについて研究しており、政府からの援助も豊富なことでも有名である。
6年前まで、川技研究所はなんの後ろ盾も持っていなかった。
ところが研究所所長が新種の細胞を発見したことにより、研究所の才能に目をつけた政府が、そこを買い取ると申し出たのだ。
研究所は、政府による莫大な資金援助を手にしたことにより、どんどん研究成果を上げていった。
やがて、川技研究所は、より効率的な交配方法について新しい研究成果を出すよう、政府から要求された。
それは、肉牛や鶏の遺伝子組み換えによって界隈では一躍有名となっていた彼らにとって、当然のことであったに違いない。
川技研究所は、実験のために汎ゆる動物の交配を行わせ、遺伝子の変化や染色体について研究していた。
しかし、その中にも失敗作はあったわけで。
ある日、時代の最先端技術を駆使して行われた実験の最中、ついに最大の失敗作が誕生してしまった。
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