空蝉

2/12
前へ
/12ページ
次へ
 俺たちは外へ出た。高木の車はアパートの隣のコインパーキングに停めてあって、その黒い車体に映し出された歪んだ影は、俺を亡霊のように見せていた。 「これ」  高木がバックドアを持ち上げる。ブルーシートの鮮やかな水色が目を刺した。  それは荷台を占領するほど大きく、ところどころをビニール紐で縛られることによって、見覚えのある輪郭を描き出している。わざわざ捲って見せずとも、高木の言った通りの中身だと察してしまう。 「……お前が、殺したのか?」  高木は答えない。  代わりにドアを閉めながら言った。 「山に埋めよう。場所の見当はつけてある」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加