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高木は俺をどこに連れて行くのか言わなかった。車は静かに高速道路を走っていく。標識を見ればおよその場所の見当はついただろうが、その時の俺にはそんな余裕はなかった。頭の中では絶えず思考が渦巻いて、荷台に積んだ死体のこと、これから自分たちがしようとしていること、それを為し遂げてしまった後のことを思い巡らせていた。
「高木」
一度だけ、俺は口を開いた。沈黙に耐えられなかったからかもしれない。いや、俺が本当に耐えられなかったのは、このまま進んでいいのかという躊躇だった。
だが、ダメだった。
いっそ無機質にすら見える高木の横顔を目にしたら、俺はもう何も言えなかった。土気色の顔。蒼ざめた唇は薄く開いたままで、ひゅうひゅうと細く息を吐き出していた。
――自首しよう。
呑み込んだ言葉は石ころのようにゴロゴロと気道を下っていった。
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