空蝉

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 いつの間に用意していたのか、高木は二人分のシャベルを後部座席から取り出した。軍手も用意されている。彼が掘る場所にあたりをつけている間、俺はただシャベルの柄を握って立ち尽くしていた。 「ここだ。ここにしよう」  地面には剥き出しの土が見えている。そこにシャベルを突き刺して、高木はぐっと踏み付けた。 「おい富樫、掘るぞ」  掘り起こした土を横に投げながら、高木が急かす。従う俺の動きはぎこちなかった。錆びた蝶番のように、シャベルに足を掛けるたび、土を横に放るたび、ギシギシと全身の関節が音を立てるような気がした。
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