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優莉香はアイスを口に咥えたままポケットから箱を取り出した。それは100ピースの白いジグゾーパズル。
「はっちが渉先輩から貰ったのをくれたの。やらない?」
「横流しじゃん」
すべてのピースが真っ白でただでさえ難しいのに、この薄暗さでは難易度が更に上がる。
「お兄ちゃん、昔、プリキュアのケーキ作ってくれたよね」
最初のピースを嵌めたのは優莉香だった。
「懐かしいな。上手くデコレーションが描けなくて優莉香が大泣きしてさ」
「お兄ちゃんが『僕がやってあげる』って」
「でも全然駄目で、ぐちゃぐちゃになった」
なかなか合うものが見つからず、俺は数個のピースを手の中で転がして遊ぶ。
「結局パパとママが虹のケーキにしてくれたの。見た目はすごい色だったけど美味しかった」
「俺は空回りしただけだったなー」
念願の妹の前で格好つけたくて。
「私と一緒に大泣きするお兄ちゃんを見て、この人とならやっていけるかもなって思ったんだよ」
俺は驚いて、ピースを探る手を止めた。
喉が突っかえたのを誤魔化すため、何度か咳払いをする。
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