2.

1/3
前へ
/18ページ
次へ

2.

 優莉香の異議申し立てにより、僕らの共同生活の開始日は先送りされた。  子供二人が小学校を卒業するまでは別々に暮らす。  但し、週末は可能なかぎり一緒に過ごすこと。 「優莉香ちゃんがああまで厭がるとは思わなかったわぁ」と母は帰宅するや否やプシュッと缶ビールを開け、弱音を吐いた。  僕だって、命の恩人が父親になってもいいかと問われると話は別だった。僕はあんな風にみっともない真似をしないだけだ。 「文哉も苗字変えるの、早かったかな」 「僕はちょうどよかったよ」 「そう?」  クラスの(わたる)君も苗字が変わったばかりで、悪目立ちせずに済んだので。 「週末、優莉香の好きなお菓子を作っておくっていうのはどうかな?」  マサフミのチョコ団子は、あざとかったけど、確かに僕の心を掴んだことを思い出したのだ。食べ物のチカラは偉大である。 「それ、すごくいいアイディアね」 「僕も手伝う」  母は僕の頭をくしゃくしゃに撫でて「文哉、ありがとう」と何度も言い、猫のショコラは喉を鳴らした。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加