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「優莉香。これあげる」
手の平に乗せられた緑色の物体を見て、優莉香は顔を顰めた。
「うんこ?」
「違うよ! うさぎの餌だよ!!」
「なぁんだ。勝手にあげていいの?」
「僕、飼育委員だから」
小屋の鍵を開け、優莉香を手招く。ご飯の気配を察知したうさぎが一斉に足元に集まった。
「うわ、うわっ。ちょっと怖い!」
「あはは。落ち着けって。手から食べるからやってごらん」
優莉香が餌を乗せた手を下げると、一番人懐っこい白兎がすかさず近寄った。
「わぁ。うさぎの口って柔らかいんだ」
「可愛いでしょ?」
「うん。また、餌遣りに来てもいい?」
僕は頷いた。
「もし他に興味がある子がいたら誘ってもいいよ」
「でも……委員って、五年生と六年生だけって決まりでしょ?」
「僕が同行したら大丈夫だよ。兄妹の特権ってことで」
優莉香はもじもじと、スニーカーで地面に模様を描いた。何か言いたいことがあるのだ。こういうとき、まだまだ子供だなぁと思う。
「……お兄ちゃん、ありがと」
「どういたしまして」
そしてこういうとき、僕は優莉香を可愛いと思う。
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