3.

2/3
前へ
/18ページ
次へ
「優莉香。これあげる」  手の平に乗せられた緑色の物体を見て、優莉香は顔を顰めた。 「うんこ?」 「違うよ! うさぎの餌だよ!!」 「なぁんだ。勝手にあげていいの?」 「僕、飼育委員だから」  小屋の鍵を開け、優莉香を手招く。ご飯の気配を察知したうさぎが一斉に足元に集まった。 「うわ、うわっ。ちょっと怖い!」 「あはは。落ち着けって。手から食べるからやってごらん」  優莉香が餌を乗せた手を下げると、一番人懐っこい白兎がすかさず近寄った。 「わぁ。うさぎの口って柔らかいんだ」 「可愛いでしょ?」 「うん。また、餌遣りに来てもいい?」  僕は頷いた。 「もし他に興味がある子がいたら誘ってもいいよ」 「でも……委員って、五年生と六年生だけって決まりでしょ?」 「僕が同行したら大丈夫だよ。兄妹の特権ってことで」  優莉香はもじもじと、スニーカーで地面に模様を描いた。何か言いたいことがあるのだ。こういうとき、まだまだ子供だなぁと思う。 「……お兄ちゃん、ありがと」 「どういたしまして」  そしてこういうとき、僕は優莉香を可愛いと思う。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加