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「僕、お兄ちゃんになりたい!」  スーパーからの帰り道、見上げた母の困り顔。 「そうねぇ。文哉(ふみや)のお願い事、叶うといいわねぇ……」  母の持つ買い物袋から飛び出た大根の葉っぱが、千切れ、夜の秋風に吹かれてアスファルトを滑ってゆく。路上駐車のトラックの下に、何か小さなものがいて、後方のヘッドライトがそれを照らす。 「あっ、子猫だ!」  僕のせいで困らせてしまった母を喜ばせようと、僕は道路に腹をつけて手を伸ばした。  怪我をした子猫は甘えてニャアンと鳴く。 「文哉!」  ざり、と音がして横を見ると、巨大なタイヤがこちらに向かってスローモーションのように転がり始めていた。  母が買い物袋を投げ捨てて僕に駆け寄ったのも、が道路に飛び出してトラックを停めてくれたのも、後から聞いて知った話。  そのときの僕はただ、僕も子猫も助かってよかったなぁとしか思わず、だから、しばらく経って母が、そのを、として家に連れて来たときは、感謝よりも不快感が勝り、挨拶も返さずにゲームに熱中する振りをした。
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