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変わり者と幼い閻魔様
趣味が悪い。鬼たちは揃って天井を見上げて呟いている。成り金が好みそうな派手なシャンデリアを何もここに取り付けることはなかろうに。そもそも日本の地獄にシャンデリアは場違い以外にないだろう。と鬼の代表の赤鬼は溜め息をついた。
「いくらなんでも西洋化しすぎだよなぁ」
緑鬼が呆れ返っている。
「あいつが現れてからというもの地獄が地獄らしからぬことになっているわよね」
青鬼は嘆かわしげに呟く。
「君らもそう思うか。あいつは超が付くほどの変人。俺の話などスルーしやがる」
赤鬼はまだ溜め息をつく。緑鬼が、
「このままで地獄の神聖な裁判所があいつの思うままになってしまう。何としてでも阻止しなければ」
握り拳を作り高々と上げたところに変わり者が現れた。
「皆さん早い出勤で」
穏やかな笑みを浮かべる若者の恰好を見た鬼トリオは、ぎょっとしている。
平安貴族のはずの若者。しかし今日着ているものは――。
「シ〇ダカ〇キ先生のようなファッションですね」
と青鬼は苦笑して言った。
「誰、その人?」
と若者は訊き返したが、鬼たちは応えなかった。説明するのも面倒だし、したところで無駄なことがわかっているから。
と、そこへ閻魔様のエンちゃんが現れた。子守りの牛のモー子さんに抱っこされている。エンちゃんの所には家政婦の馬のヒン子さんもいる。
モー子さんがエンちゃんを裁判席の椅子に坐らせた。坐るとプーと音が鳴る。その音を耳にするたび鬼たちはげんなりするのだった。
エンちゃんは人間でいうなら二才。しかし人間ではないので二才といっても分別もあるし、仕事もきっちりこなせる。ただし言葉遣いだけは幼児そのもの。
エンちゃんは女の子。では幼女がどうして閻魔様のお仕事をしているかというと、遡ること一か月半前。
地獄のある場所で亡者らの暴動が起きたのだ。たまに暴動は起きている。鬼たちでさえも手に負えず閻魔大王様、エンちゃんのおじぃ様が自らお出ましになられ、巻き込まれ大怪我をされ只今入院中。
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