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辰巳は目を丸くして俺をじっと見つめる。
「珍しいね。あんまり質問してこないのに」
「あーちょっと興味あって」
「何で?今まで日向だけはそういう感じの話をしてこなかったよ」
それはそうだろう。自分が傷つきそうな話題を自ら振るなんて馬鹿だ。今まさにその状況にあるが。あまりにも辰巳が真っ直ぐ見るものだから下手に嘘をつくのが憚られた。
「……」
「誰か好きな人がいるの?」
黙っていた俺に質問を投げかけられる。心臓が飛び跳ねそうだった。
「いや……まぁいないよ」
あははと笑いながら言った嘘はすぐに見破られる。
「いるよね。誰?だから人の恋愛話に興味持ったんでしょ」
彼はどんな嘘も見抜けそうな鋭い目で俺を見てくる。それでもあなたです……何て答えられる訳がない。元々俺は今ここでサラッと告白するつもりはなかった。
俺が転校したら人に囲まれて生きる彼は俺のことなどすぐに忘れるだろう。交際することができないのは良いが、忘れられたくはなかった。俺はこの初恋を忘れるつもりはないから彼にもできれば俺のことをずっと覚えていてほしい。だから決めていたのだ。転校することになってから、コイツの記憶に残る告白をしようと、それが転校までに残されたミッションだった。
「いるよ、好きな人。だから告白の仕方を教えて欲しいんだ。出来るだけ印象に残るように」
お前の記憶に残る方法を……。
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