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序章 プロローグ
「はぁ、疲れた……。上司恨む」
まさか、自宅帰宅後の第一声がこれになるとは学生の頃の私は思っていなかっただろう。
社会人5年目。
5年も経てば少しは仕事に慣れるかと思ったが、現実はそんなに甘くない。
勤務年数が上がるごとに激務化していく労働。
合コンを理由に帰る後輩と飲み会を理由に帰る上司。
この世に神様がいるのなら、罰当たりでも構わないから1発ビンタを食らわしたい。
そんな事を考えながら、持ち帰った仕事を片手にコンビニ弁当で夕飯を済ます。
「はぁ…終わりの見えない労働、泣きたくなってくるね」
一人暮らしになってから独り言が増えたのは知らないふりをして、手早くシャワーに入る。
全てが終わった頃には夜中1時近く。
一日が48時間だったら、なんて思うのはきっと私だけではない。
ただ、そんな私にも楽しみはある。
社畜と化した私の唯一の楽しみは小説を読むことである。
「逆境の中で咲く乙女」という小説が私は大好きで仕方ない。
内容としては、中世的な時代が舞台であろう夢と魔法に溢れた国でヒロインが王子に見初められたことをきっかけに様々な困難を乗り越えながら王子と結ばれる……という王道恋愛小説だ。
この小説はゲーム化もされており人気だが、私が何より好きなのは可愛らしく慈愛に溢れたヒロイン。
そんな可愛らしいヒロインを見て癒されていたが、そろそろ睡魔が酷くなってくるのが身体は感じ取っていた。
(嗚呼、疲れが溜まってるなぁ。もう少しゆっくり読みたいのに……)
そう思いながらも意志と身体は繋がっておらず、瞼は徐々に下がっていく。
「お……様……!」
何かが聞こえた気がしたが、気に掛ける程の体力も気持ちもなく、意識を手放した。
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