卒業文集

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卒業文集

卒業文集に、私と王志(おうし)は同じ気持ちを書いていた事を私達は知らなかった。 開く気になれずに、段ボールにずっとしまっていた。  卒業文集ー 【大好きな君へ】三年三組 椎名姫香(しいなひめか) 私には、好きな人がいる。ずっと傍にいた君の目には私はけして映らない。私を好きではない君は、平気な顔して恋の話をしては、私を傷つける。酷く傷ついたあの日、私は世界一優しい君の腕に、抱き締められた。私は、君と生きていく事を決めました。 心が壊れる程、愛した君よ。 さようなら 【大好きな君へ】三年二組 香月王志(かづきおうし) 俺には、好きな人がいる。ずっと傍にいた君の目に俺が映る事は二度とない。俺を好きじゃない君は、俺に恋の話をし俺の気持ちを踏みにじり、俺に気持ち悪いと言った。酷く傷ついたあの日俺は、世界一、優しい君の腕に抱き締められた。俺は、君と生きていく事を決めた。心が壊れる程、愛した君よ。さようなら 私と王志(おうし)は、あの日のお互いの気持ちを二度と知る事はない。 プロポーズから、3日後ー 「姫香ー。歯磨き粉ないよ」 「これ、はい」 「ありがとう」 「朝から、何?」 王志は、毎朝私を必ず抱き締める。 「朝からチャージだよ」 「チャージって」 「頬にキスしてもいい?」 「うん、いいよ」 チュッ…。 母の言葉が、頭に響く。 私にも、父と母の気持ちが少しだけわかった気がした。 「今日は、姫香からも、抱き締め返してくれるんだね」 「いつもしてるじゃん」 「そんな事ないよ」 「そんな事ある」 私は、知ってるよ。 王志が、どれだけ要君を愛していたかを… 要君に、拒まれたあの日から 王志の心は凍った。 どれだけの優しさや愛を与えても、王志の心は溶けなかった。 それでも、王志は私の手を放さなかった。 私も、王志と同じだった。 王志以上に、私を理解するものなどいない事を知っている。 互いの傷を埋め合うように、私達は過ごす。   今日も、明日も、その先も… 私は、ずっと王志の傍にいるよ。
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