君へ。

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―――告白とか、さ。 したこともされたこともなくて。 したい人がいなかったわけではないけど、でも、どうしてもしたいというかは、失敗したときのリスクを取っちゃって。 しなくても別にいいやって考えちゃって、 段々年を経るにつれて、別に告白したいとも思わなくなって。 こんなに告白したいと思うなんて、思ってなかった。 友人と恋人とか、大して変わんないとか、逆に相手を無理やり自分に締め付ける行為である告白って相当迷惑なんじゃないのかなって思ってるし、今もそう思ってるけど。 でも、それでもどうしても自己満でもいいから、とにかく君の恋人になりたくて。 自分でも、自分がわからないんだ。 君のことを考えるだけでソワソワして何も手につかなくなるし、君を見るだけで胸がキュッとする。 この感情が恋なのかはわからないけれど、君の隣にいるだけできっと楽に息ができるし、きっといつでも笑顔でいられる。 これは確実に自己満足だ。 勝手な告白だ。 でも、君が他の人と付き合うなんていやだ。 君を前にして、君と笑い合って、喧嘩ばっかして、そんな日々が崩れるのは怖いけど、でも、言わずにずっとこのままなののほうが怖い。 だから、言わせてほしい。 そしてできれば、どうか、受けてほしい。 大好きです。 付き合ってください。――― “こんな感じで送ろうと思ってるんだけど、” “どうかな。” 無料通話アプリが、美樹からのメッセージを受信した。 好きな人に告白したいから手伝ってと言われたのが三日前。 美樹が告白用のメッセージを用意して、優香、添削お願い、と送ってきたのが今日の、ちょうど今のこと。 なんて人使いが荒いんだろうか。 って一瞬思った私は親友として失格なのだろうか。 ま、告白っていう結構大事なイベントの手助けとして選んでくれて死ぬほど嬉しくもあったけどさ。 サラッと読んだけど、おかしなところは特にないし、あいつらしくていいんじゃないかと思う。 優しさが伝わるし、好きなのが伝わってくるし。 流石は国語学年一位。 “いいんじゃないかな” “おっけ。ありがとう。送るわ。” ……ちょっと悲しい、というか、悔しい。 私は、美樹のことが、昔から好きだから。 その、誰かもわからないやつに美樹を取られた気がして。 親友だし、すっごくどうかなと思うんだけど、でも、どうしようもなく好きだった。 それこそ小さい時から。 もちろん言わなかったし言えなかったけどね。 ちょっと悲しい気持ちを押し殺して。 “頑張れ!!” って打った。 好きな子の幸せを願って。 あー。私、失恋したな。 って、唐突に思った。 でもどっかでやっぱり諦めてたんだろう。 涙は出なかった。 ピコン。 無料通話アプリの通知音がなった。 何だ、と見ると、美樹からの通知。 開けると、さっき送られてきた文面。 間違えて送ったのかな。 “送り先間違えた?” 打って、送ろうとしたその時。 ピコン。 “付き合ってくれませんか……?” “これ、優香宛のラブレターなんだけど、” “やっぱしだめ…かな。” 嘘……だろ。 美樹……好きだった…? 私を……? 送る寸前だったメッセージを取り消して、 “それは、ほんとのやつ?” “…うん。” “……付き合おうか。” “まじ?” “うん。” “電話していい?” “しよ。” 間髪入れずに電話がかかってきて、緑の通話ボタンを押すと、聞き慣れた明るい声。 初恋は実らないものらしいけど。 実る初恋もあるんだなって知った。
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