猫の耳に溜め愚痴

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                 4 春に背を向けた瞬間私の手を誰かが掴んだ。 「え!?」 「待って!!」 慌てて後ろを振り向くとそこにハルはいなかった。代わりに白髪の男性がいた。 この人どっかで… そう思った瞬間、その人は言った。 「い、行かないで。」 ああ思い出した。ハルと出会う前に私を何やら止めようとした変な人だ。 「……!!!」 やばいやばいやばい、この人って幽霊?いきなり出てきた。ヒエ〜。こういう時って無視したほうがいいよね。 私が歩こうとすると掴まれた方の腕にグイッと力が増した。 「…!」 ど、どうしよう逃げれない。離してって言っていいのかな。いやそれで話しても何も変わらないかも。ああ、でもでも… 必死に考えている間そこには沈黙が続いた。 先に口を開いたのは、向こうだった。 「お、お願い。待って…」 うわ〜マジの幽霊じゃん。もう何よぉ〜。 叫びったくて仕方がなかった私に向けて男性は衝撃的な言葉を口にした。 「澪ちゃん」 「えっ!?」 あまりにびっくりすることだったから思わず声に出して振り向いてしまった。 あ、もう終わった。 慌てて視線を落としたけどもう恐怖しかなかった。 「澪ちゃん、ハルだよ。」 「は?」 拍子抜けた声でまた視線を上げてしまった。 その瞬間、私の腕を握っていた手の感覚が消えた。と思ったら下からニャアと声がした。 「ハ、ハル…?」 「うん、僕だよ。」 そうハルが喋った途端、またさっきの男性が現れた。 「え、ええええええ!?」 「うわっ何!?」 思わず私が大きな声を出すとその声にびっくりしたのか向こうも大きな声を上げた。 「あ、あなた誰?ハ、ハルなの?ちょ、どういうことなの!?」 「えええっと、あの、その、えっと、み、澪ちゃん落ち着いて!」 「うわ、てかなんで名前知ってんの?ストーカ?やだ、こっち来ないで!」 「ひどっ!偏見!ハルに向かって何その言い草!」 「だっていきなり姿変わるし…」 「あああ分かった分かった!!」 語彙力崩壊の会話を数分交わした後、ハル(自称)は経緯を話し始めた。 「いい、落ち着いて聞いてね?」 「何その、衝撃的な展開が待ってる前に言うみたいなセリフ」 「うっさいなぁ」 「は、何!?」 「何でもない!!」 その後も話がなかなか進まなかったが、しばらくすると話が進み始めた。 「要は、あんたここの神社の神様なの?」 「うん。」 今までの話を説明すると、ハルはこの神社で最近私の前に現れていた白猫の張本人でもある。ちなみに、私がハルと出会う前に現れたあの白髪男はハルだったのである。 最初は変人野郎だと思ってたけど最近私がハルに愚痴った内容を全把握してるからやっぱハルなんだ。 「神様ってすごいなぁ」 「えへへ、そうでしょ」 感心しながら私が言うとハルは嬉しそうに笑った。 その時、私の頭に一つの大きな疑問が生まれた。 「待って、じゃあなんで何年間も恋愛成就を願った私の願いは叶わなかったの!?」 「ゔ…」 ハルが渋い顔をしてそっぽを向いた。 「知らない」 あからさまに知ってるような態度。てか、だんだん顔赤くなってない? 「ねぇ、なんでなの!?てか、あんたのせいなの!?」 私はハルに顔をぐいっと近づけた。 「ハ、ハイ…」 ハルはすごく小さな声で自白した。 「はぁぁぁ!?」 「私の青春の謳歌を邪魔したのはあんたなの!?」 「ハイ…」 「もういいっ。この神社、二度とこないから。」 そう言って私はハルに背を向け、神社から出ようとした。 「ちょっと待って!!!事情がちゃんとあるの!?」 「…」 もう知らない。 「あああああもうっ!好きだったから!!」 ふーん好きだったんだ。それはおめでたいこと。 「澪が好きだったから!!!!」 へー私が好き…へ? 「はひ?」 振り返るとハルは真っ赤だった。 「い、今なんて?」 「澪が初めて神社に来た日から好きになって…それで…澪の周りの人に、澪に恋をしないように指示を…」 「はぁぁぁいぃぃぃ?」 ああ、もう意味分かんない。頭が熱くて思考がショートして、もうなんなの。 「え、今ハル何ていっ…ちょ、えっ!?は?てことは私…くふっ、あははははっ!もうっ!なんなの!私、てことはモテてたんじゃん!」 「ほんともうモテまくってたんだよ!だけど僕、澪のことが…」 そこまで言ってハルの顔はさらに赤くなった。 「あああああ、恥ずかしー!!」 「ちょ、私まで恥ずかしくなるじゃん!」 ほんともう意味わかんない。 私の青春を奪って、てかモテてたんじゃん私。 猫に愚痴ったら腕掴まれて。 て思ったら確信犯猫で。 て思ったら猫が神様で。 神様が私の恋泥棒で。 意味がわからない。はちゃめちゃすぎる。 あぁ、顔が熱い。これが恋なのかな。 もういいやこれで。 「ねえハル、私の青春奪ったから謝罪してよ。そしたら許す。」 「ゆ、許すって…謝罪…?」 あ、こいつ、不器用で鈍感だ。 「だから、ちゃんと私にコクれつってんの!」 「は、はい!」 ハルは私を見た。 ハルも私もきっと顔は真っ赤だろう。 ハルが口を開いた。 「み、みお、す、好きです、つ、つつつ付き合ってください!」 「なんだそのコクり方!」 「え、ええ〜」 「全く、私の青春、ちゃんと返してよね。」
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