猫の耳に溜め愚痴

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                 2 放課後、帰宅部の私はいつものように通学路を歩いていた。 そうそう、私の通学路の途中には小さな神社がある。ご想像の通り、恋をしたくて堪らない私は月に一回は恋愛成就のお願いをしてる。 な・の・にぃぃぃぃぃ 私は地面に転がってた石を力任せに蹴った。 「ニャアッ!!」 「え?」 びっくりして前を見るとそこには白猫…じゃない白髪の男の人がいた。ちょうど私と同じくらいの男の人だ。制服は着てない。 「人?」 おかしい。さっきまで誰もいなかった。猫がいたら気づくはず。ましてや人間がいたら… 「え、えええ??」 理解不能。てか、怖い。慌てて方向転換をして私は走り出した。 「ちょ、ねえ待ってよー!」 無視無視無視。 全力で走っていると目の前に猫が現れた。気づくと私は神社の前にいた。あのよくわからない変人がいたところから随分離れたところに私はいる。猫はニャアと鳴くと神社へ足を踏み入れた。そして数歩歩いたあとこちらをチラリと振り返った。まるで「こっちへ来て」と言っているかのように。 別にこのあと用事があるわけではないので猫の後に続き神社へ入った。 一応、いつも通り恋愛成就のお願いをしといた。叶うわけがないのだけど。 「ニャア」 後ろから猫の声がした。猫は真っ白の毛の白猫だった。一瞬さっきの出来事が脳裏をよぎったが猫を見た途端消えてしまった。 「かわいい」 「にゃぁ」 うん、凄く可愛い。毛サラッサラッじゃん。黄色い瞳がこっちを見てちょこんと座っているその白猫は、もはや可愛いの塊だった。 ちょこんと座っている白猫を見て私も隣に座った。白猫は全く逃げようとする素振りを見せなかった。 そっと頭に手を伸ばすとふさふさな毛が指に触れた。 「かわいい〜」 再び私はそう呟いた。 あーこんな時間がずっと続けば恋のこともちょっとは忘れられるかもな。 「てか私、恋のことしか頭にないじゃん。」 独り言のように私は呟くと猫に向かって言った。 「ねえ白猫、君は恋をしたことがあるの?…って言ってもわからないか。」 「ニャア」 「あのね私ってね18年間生きてて一回もコクられたことないんだよ。思い切ってコクったこともあるんだけど全部振られてさー、」 私は立ち上がって胸の前で拳を握った。 「私だって恋したい!!!」 「にゃ…」 私は猫を見ると言った。 「よし、お前は私の唯一の癒しだ。名前をつけよう。うーん、白猫、白猫…」 私は一つの名前が頭に浮かんだ。人差し指で猫の鼻をちょんと触ると言った。 「決めた!お前の名前はハルだっ!!」 名前の由来はもちろん『春が来る』の春だ。私に春が来ることを願ってつけた。 「にゃ」 猫はなんとも言えない表情でこっちを見た。 気に入らなかったのかな?まぁいいや。この子多分野良猫だし。 私は猫の首元を見る。サラサラな毛には首輪などの装飾品は一切見当たらなかった。多分飼い猫ではないだろう。 私はハルを見るとこれで何度目かの言葉を口にした。 「あー恋したい。」
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