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きっかけは垂れた汗が固まったことだった。
身体から雹が降るみたいに、結晶が落ちていった。フェイは面白がったが、両親は焦りに焦りすぐさま医者に連れて行った。
原因はわからず、入院してひと月が経過して血小板による凝固作用の過剰反応が原因ではないかという見立てを医者は口にしたが、確証を得ることは出来なかった。
更に二か月間彼女は検査を受けたが、確信の持てる情報は得られずフェイは退院した。幼かったフェイは自分の身体の変化を楽しみ、汗を使って玉を作る遊びを何度両親に止められてもやったのだった。
能力が増強してきたのは、暫くしてから。今にして思えば、遊ぶことが訓練になっていたのだ。
キラキラと光る身体から発生する霧。フェイはそれが固くなることを知り、玉以外のものも作るようになった。同時に検査を受ける度に血小板の数が増えていったのもこの時からだ。
両親からすれば気が気ではなかった。血小板が多いと血液が固くなり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが跳ね上がるからだ。たが彼らの心配を他所にフェイの能力は向上していった。
身体から散布される霧の調節次第で結晶の形を変えられることに気づいたフェイは、折り紙で遊ぶように能力を使用した。
鶴や蝶を形造り、嬉々として完成した品を複雑な顔をする両親に見せたのだった。やはり原因も原理も分からない娘の症状に不安があったのだ。
両親は娘の笑顔に応える一方で、もしかして何かの病気なんじゃないか、そんな心配があった。
だが2年が経過し健康被害が現れないことで、不安もある程度消えていった。このまま何事も起こらないのではないか、そう考えるようになっていった。
しかし悲劇はやって来た。フェイにではなく、両親の方に。
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