3.免罪符(前半)

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 設立理由は蜜月関係に当たる浪士党にあった。党員の度重なる素行不良に加え、彼らに対抗する市民団体が実のところ優秀なこともあり正攻法では庇えなくなったことがきっかけだ。  浪士党をのし上がらせたいロウ・ディフェンダーは、非合法な部隊を結成し、彼らを標的にした。  更に秘剣では手に負えない犯罪者、主にヤクザ関係者も攻撃対象となった。対処できず治安の維持が無理だと見做されたら警察が介入する流れになる。  警察の捜査の手がヤクザに及べば、それは浪士党にまで及んでしまう。それ程までに浪士党はアウトローとの関係が濃かった。ロウ・ディフェンダーとしてもその関係を利用してきたわけだが、いよいよ状況のコントロールが難しくなったことで、以前から集めていた腕の立つ連中を活用することにしたのだ。 時に傷つけ、時に陥れ、時に殺した。  消毒部隊が産み出すあらゆる死。それは不審死と認識されるも、そこ止まりで終わる。  初期の不審死は消毒部隊が主に行った。だが途中からは浪士党員に煽られ、過激化した支持者による件も増えた。消毒部隊のターゲットも多様化すると、支持者は更に過激になる。反対意見は黙らされ、あるいは暴力の影に怯えて鎮静化していった。  警察に直接頼ろうにも110番に電話すればロウ・ディフェンダーに取り継がれるようになっていた上に、一時期ロウ・ディフェンダーを介さない通報がことごとく悪質な嘘だったことも重なり、今では警察がロウ・ディフェンダーに確認の連絡をとる始末だ。  その悪質な嘘も消毒部隊の成果の一つだった。  積穏町が孤立していくのをフェイは眺めていた。そして彼女の目には、一つの光景が映っていた。  自由が死ぬ光景を、彼女は確かに見た。
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