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一度お猪口を口に運んでから羽宮はフェイに目を向ける。
「聞かされてはいたけど、こんな可愛らしいとはね。学校でモテるだろ?」
フェイは質問に答えずただ見返す。すると急に不機嫌になり羽宮は失礼だなと口を動かした。
「土掘り」フェイは無表情のまま言葉を吐き出す。「いい加減説明してもらっていいですか? 免罪符が一体何なのか。それと……」
無色に赤が数的垂れる。それは怒りの色であり、赤を孕んだ瞳を土掘りに向ける。
「何で夏原旅館に手を出したんですか? 私がお世話になっている方々を傷つけた理由を言いなさい」
「おいおい、随分強気だねお嬢ちゃん」
羽宮は破顔する。
「ロウ・ディフェンダーや浪士党を敵に回すって分かってるのかい?」
「必要ならその覚悟もあります。そもそも存在すべき組織ではないですから、二つとも」
羽宮が面を食らい、次に口笛を吹いた。気に入ったともう一杯酒を飲んだ。
土掘りは特に感慨を見せずに淡々と対応した。
「口のなってない娘で申し訳ありません。以前はこうも反抗的ではなかったのですが」
「離れて確信しただけですよ、土掘り」
険を混じらせ吐き捨てるフェイ。土掘りは彼女を見上げた。
「どうやら、私も随分嫌われたみたいだな」
「現実の暗殺者なんて一人残らず唾棄すべき人間だって悟っただけです」
「それは血錆もか?」
フェイは答えない。土掘りは少しだけ笑い、ゆっくりと立ち上がる。どこか茶目っ気のある瞳からは一つのメッセージが窺えた。
お前は正しい。
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