3.免罪符(前半)

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 「本当に面白いな」羽宮が言い、フェイを見据えた。「しかし、やっぱ信じられんな。その子が超強いってのは。その上超能力が使えるってのは」  「特異体質の持ち主です。それを利用した近接戦闘の達人でもあります。ああ、実際見てもらった方が早いでしょう」  フェイ、と名を呼ばれ彼女は顔をしかめる。実践してみろ、ということは伝わっていたが、どうしてそんなことをしなければいけないのかが、納得できなかった。  しかし、ここで駄々をこねても話が先に進まないと思い直し、溜息の後に彼女は右手を前に出す。  手から霧が舞った。  発汗機能を調整し、体内の水分や血液がミストとなって漂い、血小板の作用で固形化していく。  霧の出る勢いを調整することで、固形化する際の形を調整した。周辺の水分を巻き込み、フェイの武器が精製されていく。  右手に刀が収まった。驚愕する声が奥に男と護衛の口から漏れる。  土掘りがゆっくり離れながら説明する。  「彼女の能力の一つです。血小板の過剰反応らしいのですが体内物資と周辺の水分を使って武器を製造します。更に鉄分とヘモグロビンを操作することで運動機能を強化する他、回復機能の増強も能力の一つです。回復はオートで発動しますが、他の能力は彼女が操作することで発動します。  おそらく、という表現が多いのは研究しても確定できなかったからです。まだまだ謎の多い能力ですが実戦で充分活用できることは実証済みです」 土掘りはフェイと羽宮を交互に見た。  「この子の能力は驚異的です。しかも私の知る頃よりも背も伸び、筋肉もついて、実力も上がっている。まだまだ実力も上がるし、現段階でもこの子に勝てる者は稀です」  しかし。  土掘りはフェイに背を向け、議員に向き合う。  「ですが対処できないレベルではありません。彼女の能力は非常に燃費が悪いんです。すぐにガス欠になるんです。体内の水分を使っているので、精製しすぎると脱水症状に近い状態になり、動くこともままならない。そうなると武器精製も、身体能力の向上もできなくなります。回復機能は消耗しても機能しますがそれだけです。ここに来る前に行った戦闘で、今もかなり消耗してる筈です。もうすぐ能力不能状態になるでしょう」
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