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弱点をべらべら話す土掘りをひと睨みするフェイに、彼は冷ややかな視線を返す。
「更に、我々は彼女に対する決定的な対抗手段を有しています」
やれ、と短い号令の後。
首筋に鋭い痛みが生まれる。咄嗟に払いのけるも、何かが流し込まれるのを防ぎきれなかった。首筋を抑えながら背後に振り返れば、地味な格好をした男
が注射器を握っているのが見える。
何かの薬剤を打たれたのだと悟った。
「何をしたんですか?」
距離を取りつつ、フェイは武器を精製した。
すると土掘りが片手を向け、少し待てと静かに言ってから腕時計に目を落としたので思わず出鼻を挫かれてフェイは待ちの状態に入ってしまう。
一分が経過し刀が崩れ、フェイは全員との間合いを気にする。土掘りも先程の注射器の男も、動こうとしない。
時間だけが静かにも燃え、立ち昇る不安がフェイを息苦しくさせた。
五分経ったところで、土掘りが顔を上げて武器を作ってみろと言ってきた。
意味が分からずに動けずにいると土掘りは頭を振り、背広の下に右手を突っ込んだ。
降ろされた手が握っているのは折り畳み式の軍用スコップ。鉈に斧にも、そして彼が使えば手槍のようにもなる土掘りの得意武器にフェイは息を呑んだ。
隠し持っていたそれを伸ばすと、彼は肩を回して肘を引き上げ、天を突き刺すように上方へ向けた。
直後、右足を大きく踏み込ませながら右手を一気に降り落す。
瞬間的にフェイはスウェーバックを披露した。鼻先で落下し、レインコートの胸元を掠めてスコップは振り抜かる。
即座に武器を精製しようとする。だが霧は出てくれるが、形を成すことはなかった。
まさか——
力強く、土掘りが全身を捻る。
左肩を背中に回して右肩を前へ伸ばして腕を突き抜けさせた。
スコップの先端が鼻先に突き付けられる。土掘りが止めなければ卵のように顔が割れていたことは明白で、フェイは息を呑んだ。
十秒、世界が停止する。
土掘りは体勢を崩し、スコップを折り畳むと背中に仕舞った。フェイは大きく息を吐き出し、肩で呼吸する。
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