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まさか、こんな、なんで……
思考がまとまらず、言葉を意味に紐づけられない。さらに十秒経ってから、彼女はようやく言葉を発することが出来た。
「私に、何をしたんですか?」
後退りながらフェイは訊く。土掘りは表情を変えずに説明した。
「専用の高血小板薬を使った。常人に使ったから死ぬレベルの容量の代物だ。一時的だがお前の能力を封じることができる。回復促進だけは使えるかもしれんが、武器精製も身体能力向上も使えなくなってる筈だ。今なら、お前がさっき倒したヤクザ相手にも負ける筈だ」
土掘りは羽宮に向き直り、背筋を伸ばした。
「議員、見ての通りです。我々は彼女の弱点を知り尽くしています。確かな強さがある一方で、制御は充分可能。彼女を免罪符所有者にしても問題ないかと思います」
状況に合点がいき、フェイは苦虫を潰したような顔をした。
「どうやら、ようやく本題に入ってくれそうですね」
フェイが言うと、土掘りは振り返った。
「そういうことになるな。お前が抜けてから、我々はある事業を開始した。それがお前が聞いた通称、免罪符システムと呼ばれる代物だ。簡単に言えば犯罪補助サービスといったところか」
「犯罪……補助?」
信じられない響きにフェイは思わず繰り返した。
土掘りは淡々と説明していく。
「ロウ・ディフェンダーが確保したあらゆる人材を使い、犯罪をサポートするサービスだ。お前が抜けてからの消毒部隊の主な任務がこれだ」
「タチの悪い冗談ですよね?」
フェイの質問には答えず、代わりに携帯端末を渡す。
怪訝な気持ちを表に出し、フェイは受けとったそれを見ると、アプリが一つだけ表示されている。
真っ黒なアプリ。
眉を顰めつつ起動すれば情報が一気に展開する。すると積穏町のマップが最初に表示され、マップに光点が表示されていた。試しにタップしてみれば、そのポイントの映像が表示される。
防犯カメラの映像だとすぐに分かった。
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