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3.免罪符(後半)
免罪符システム。
途方もない説明にフェイは声を荒げる。
「馬鹿げてます。こんな、だって例えば銃乱射とかしたらどうするんですか?」
「実行場所と時間を指定すれば可能だ。全身を隠してもらい、万が一に備えて逃走サポート要員を必ずつけてもらうがな。それとその規模の犯行なら、世論の沈静化の為に必ず身代わりが必要になる。体格の似た奴を人身御供にする。殺した後に発見、書類送検と言った具合だ」
血の気の引く思いがした。
「そんな、そうだ、ネットで拡散されたら? 身体の特徴とか、真相に辿り着ける材料を晒されたらどうするんですか?」
「積穏町の基地局は全て我々の制圧下に入った。通信内容は傍受できるし、犯行近くの携帯は全てチェックしてる。遠隔で映像を消せることも既に実証済みだ」
更にメディアを校閲するコネも手に入れていると、彼は説明した。
晒したくないモノを日の光から遮る影は、途方もない程に巨大化していた。
このために、様々な職業に介入できる立場を手にしたのだと土掘りは言う。
傍受と監視を行い、暗躍する為に。
さながら鳥籠にいる状態だった。見えない糸で作られた、酷く窮屈な監獄が完成していたことに、フェイは初めて気がついた。
「正気じゃない。どうして、こんな事をしているんですか?」
切羽詰まった口調で訊くフェイに答えたのは、羽宮だった。
「うちの連中のせいだよ。浪士党にいるゴロツキのせいさ」
お猪口を傾け、彼は語る。
「数を揃えたのはよかったんだが、どいつもこいつも問題ばかり起こしやがる。人追っかけて轢いておいて、ぬけぬけとテレビに出る野郎や、嬢ちゃんくらいの年の子を妊娠させる間抜けもいる。注意はするしカメラの前で馬鹿野郎とかは言うさ。でも厳罰とかにしたら、それは他党への隙に繋がる」
「責任を取ること、取らせることも貴方の仕事では?」
目を細めるフェイに羽宮は分かっていないな、と口角を歪めた。
「大人の駆け引きは、まだ君には早いか」
いや、わかってる。ただの醜い保身にすぎないことくらい。
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