3.免罪符(後半)

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 「不祥事どころか、刑事裁判レベルの事件が連発した」  土掘りが溜め息混じりに漏らす。  「昨今の情勢なら党の解体とまでは行かないだろうとタカを括るには、まだ市民団体が厄介だった。かなり弱体化したが、それでも彼らは証拠と証言を確実に集め、勝てる裁判を起こしていた。地味な活躍も根気よく続け、成果を出していっていた。浪士党と違って頭のいい人達だ」   羽宮はむっとして文句を言おうと口を開くが、土掘りがひと睨みするとすぐに押し黙った。敬語を使ってはいるが、上下関係にそこまで差はないらしい。  皮肉だな、とフェイは思う。  垣間見えた土掘りの本心。味方である浪士党は見下す一方、敵である市民団体側に敬意すら示した。  経験豊富なアウトローだからこそ培われた審美眼があった。どんなに取り繕っても、血と暴力を扱う者達は暗く歪んでいて、それに対抗しようと健気に努力する人こそ本当の勇者だと彼は知り過ぎているのだ。  だからこそ、彼はフェイが脱退することを黙認した。フェイが抜けるように仕組んだのは血錆で、彼はそれに反対を唱えたが、最終的には受け入れた。 理由は結局、先程フェイが言ったことが正しかったからだ。  お前は正しい……  「不祥事が連発した」  土掘りが気を取り直して繰り返す。  「市民団体は消毒部隊の成果で弱体化したが、盛り返す可能性はあった。いちいち火消ししたのでは間に合わない。そこで計画されたのが犯罪行為をコントロールすることだ。犯罪を完璧に止めるのでなく、こちらの望む方向に向かわせることが計画された」  「それが免罪符システム、ですか?」  フェイの言葉に土掘りが頷くと、彼女は少し目を伏せた。  「なるほど、実験ということですね?」
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