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剣道部
武道館の入口で、剣道部の先輩たちに会った。
「とーこちゃん!よく来てくれたわねえ」
抱きついてくれたのは、女子の主将の沙和(さわ)さん。中学時代の先輩でもあり、藤崎先輩の彼女。よく道場にも遊びに来てくれた。
「お世話になります。新入生たくさん入ったって聞いたんですけど...」
沙和さんの目が泳いだ。
新入部員はいないようだ。
「うん、みんな辞めちゃってね。まあ経験者じゃないから怪しいなとは思ってたんだけど、皆が皆...とーこちゃんの兄目当てとは。せめて半分は残るかなと思ったんだけどねー。あと、暑くなってくると女子にはやっぱりキツいよね。」
笑うしかない、という感じの沙和先輩。
「お疲れ様」
声に振り返ると、日光にサラサラの髪が光っていた。
「ああ、勇吾の言ってた助っ人くんね。美少年が来たからびっくりしたわよ」
佐川くんが、少しだけ目を細める。
その背後から、黒いオーラを背負って、
お兄ちゃんがやってきた。
他の部員が、そそくさと入っていく。
「お前誰だよ」
お兄ちゃんが佐川くんを睨みつける。
「佐川蒼介。この人に来いって言われた」
佐川くんが藤崎先輩を指さす。
藤崎先輩がお兄ちゃんと佐川くんの間に立つ。
「助っ人。」
「瞳子とはどういう関係だ」
「...同級生?クラスは隣。今回は助っ人仲間になるのかな。友達までは親しくない。顔見知り。これで満足?」
かなりの身長差があるのに、顔色も変えずスラスラ答える佐川くん。
私の頭をくしゃくしゃに撫でると、お兄ちゃんは藤崎先輩と部室に行った。
佐川くんは、ふっと笑った。
「噂通り、溺愛されてんね。でもお兄さん可愛いね」
耳を疑った。
可愛い?
あれが?
まじまじと佐川くんを見る。
「あ、別に男色趣味は無いから。」
なんだか、想像してたよりも、佐川くんは謎が多くて、黒い感じがする。
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