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一瞬、何が起こったのか分からなかった。藤崎先輩も口を開けていた。
蹲踞という、しゃがんだ状態からまず立ち上がり剣先を交え、距離を図るというのが定番なのだが。
佐川くんは、立ち上がりながら横に飛んだ。
兄の死角に入り、振り返りざまに、片手で面を打った。
パコーン。
本気で打ち込んでいない、軽い音。
佐川くんが藤崎先輩を見る。
藤崎先輩は困ったように笑いながら、佐川くんに一本、と旗を上げていた。
「なっ?何だこれ」
兄貴が声をあげる。
フェンシングのような格好で。速くて。
あれは防ぎようがないと思った。
「こういう事だよ。さ、一本とったぜ」
「...条件言えよ」
佐川くんがニヤッと笑った。
座っている私を指す。
「1日3回以上喋るのを認めてくれ」
は?
私もだが兄も拍子抜けした。
「わかった。」
「じゃ、二本目な」
試合は続行された。
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