安曇家の兄と妹

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道場の扉に手をかけた所だったが、兄貴のカミっぷりが面白くて振り返ってしまった。 「もし彼氏が出来たらどうだっていうのよ」 「そんな勇者はいない!ここはファンタジー世界じゃねえんだぞ?」 「失礼ね」 「お前に1日に3回以上話しかけるような命知らずは漏れなく四月に狩った」 お兄の頭が暗黒ファンタジーだ。 そうか、六月現在、私に話しかける男子がメモを見て長文を読み上げるのはそのせいか。 挨拶以外でうっかり用事があったら困るものね。 って何故そんな兄ルールがまかり通ってるんだ。 そんなだったら『彼』とも話せないじゃないか... 黙り込んだ私を、兄貴が竹刀で突っついた。 「会話せずに彼氏作ろうとか考えてないだろうな?スマホ没収するぞ」 「...は?」 「叩き割って解約して機種変して毎日アドレス変えさせる。」 「そんなことできるわけな……」 「お前じゃない、相手の男だ」 ビシィッ 竹刀が床に叩きつけられる。 やる。 こいつならやりかねん。 実際出来るかどうかはさておき、こんな兄がいる事自体、バレたらまっとうな男は逃げる。 まっとうじゃない男も、兄貴だけで充分。
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