酷薄な告白

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〜裏話〜 「で、俺はやったよ。報酬の金は?」 「こちらです」 「ふーん。ピッタリ請求額と同じ。やるじゃん。」 「それはなんでも屋さんの仕事には定評があるので」 「で、女の子は追いかけてきてくれた?」 「まだ、僕には辿り着いてませんね…」 「そう悲しい顔しないでよ。俺との契約内容忘れた?」 「僕と三笠さんをくっつける、その代わり十万出せ、という半ば無理な内容でしたよ」 「最終的に一万に落としてあげたじゃん」 「そういうことではないですよ」 「あー、お堅苦しいのは嫌いだよ」 「だって、お金の取引ですよ。堅くなるのも当たり前です。」 「そうだよねー。人生金だもんねー。あー、やっぱりお金っていう紙切れや石がさ、好きなものやらなんやら欲望を満たすための等価交換アイテムなんて面白いよね。金を生み出した人は天才だと思うわ。」 「はい。おーけーだよー。」と言う剽軽な声とは違った。 「うん?どうした?」 僕の手が止まっているのを見て目の前の人が呟く。 「アフターサービスはありますよね?」 「もちろん。契約内容完了で俺の仕事は終了。君との関係もさよならバイバイってわけ。」 「なんで、午前中はこの学校の図書室に?」 「知りたい?」 知らせないという雰囲気のみがただよう。 「いえ、大丈夫です」 「そう。命拾いしたね。」 それはマジな話なのだろう。 「さーて、行った行った」 図書室から追い出された。 僕は急いで借りた本を手に持つ。 「早くしないと授業始まっちゃうよー」 「もう、始まってます」 「あっ、そっか」 ニッコリと笑ってあちゃーと言う。 その人は不思議なものだ。 数回しか会ったことはないが、いつもパーカーのフードを深くかぶって、しかも中にはキャップもかぶっている。暑くないのだろうか? 「ごめんねー。サボらせて。頑張ってね。」 「ありがとうございました」 僕は教室へ急いだ。 *** 少年はフードとキャップを取る。 出てきたのは白髪に赤黒いメッシュの頭だった。 前髪は右目を完全に隠し、左目はチラチラと見える。 その瞳には何にも写っていなかった。 「今日の営業は終了かなぁ」 手をパンパンと叩く。 準備室に入り、トートバッグ一つを腕にかけて戻ってきた。 「今回の黒髪地縛霊も面白かったなぁ。女の子相当信じ込んでたし。」 いたずらっ子のように笑う彼の目は一生笑わない。 「あー、この一万円で何しよう」 少年は一万円札を持って首を傾げる。 「決めた!今月の食費に、って、そのお金はもうあるんだよ!」 スキップしながら帰る少年の後ろ姿はどこか儚げだった。
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