8人が本棚に入れています
本棚に追加
『つきのさばくをはるばると
たびのらくだがいきました
きんとぎんとのくらおいて
ふたつならんでいきました』
もうどのくらい旅をしているのだろう。
お姫様は、ほうっとため息をついた。
見渡す限り、砂、砂、砂……。
そう、ここは沙漠なのだ。
らくだに乗って旅をする王子様とお姫様以外、誰もいない。
お姫様の乗るらくだが「ぐおー」と鳴き声を上げる。辺りはとても静かなので、その声はよく響いた。
お姫様は、手を伸ばして、らくだの首にかけられた振分荷物を取る。
中には、コスメセットが入っている。彼女は、その中から、とっておきの高級化粧水を出して顔に塗った。
鏡を見た彼女は、さっきより大きなため息をつく。
「顔がパリパリでシワシワだわ」
「なに? なんか言った?」
前を行くらくだから、王子様が尋ねてきた。
「なんでもない」
皺が増えたことに、少なからずショックを受けたお姫様は、ぶっきらぼうに答える。
「女の子の日?」
お姫様がご機嫌ななめなので、王子様はそう思ったのだろう。
お姫様は心の中で舌打ちする。
なんてデリカシーのない人だろう。嫌いだわ……。
でも、今までもこれからも、らくだに乗って二人きりで旅をするしかないのだ。
何故なら、ここは空に浮かぶ月が綺麗な沙漠。
旅をするのは、王子様とお姫様と決まっているのだから。
最初のコメントを投稿しよう!