つぎのさばく

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『さきのくらにはおうじさま あとのくらにはおひめさま のったふたりはおそろいの しろいうわぎをきてました』 この沙漠を越えたら、小さな集落とオアシスがあるはず。そこで食料と化粧水を補給しよう。 セレクトショップもあるといいな。ずっと同じ薄手の白い服だから、たまにはド派手なブランドのドレスも着たいな。 ショッピングだけが楽しみだ。 でも。 本当は、沙漠から抜け出したい。 いつになったら、沙漠から脱出できるのだろう? お姫様は知っている。 ここを抜け出しても、また次の沙漠が待ち構えていることを。 一体、誰なのだ。 絵本の『つきのさばく』に、マジックでいたずら書きしたのは。 表紙も、中身も『つぎのさばく』になっている。 「誰か助けてえー!」 静けさの中で、お姫様の悲痛な叫び声がこだまする。 「ぐえ〜」 らくだが慰めるかのように一声鳴いた。 『ひろいさばくをひとすじに ふたりはどこへゆくのでしょう おぼろにけぶるつきのよを ついのらくだはとぼとぼと さきゅうをこえていきました だまってこえていきました』 [おわり] ★作中の詩は、加藤まさを作『月の沙漠』(大正12年発表)です
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