つぎのさばく

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『つきのさばくをはるばると たびのらくだがいきました きんとぎんとのくらおいて ふたつならんでいきました』 もうどのくらい旅をしているのだろう。 お姫様は、ほうっとため息をついた。 見渡す限り、砂、砂、砂……。 そう、ここは沙漠なのだ。 らくだに乗って旅をする王子様とお姫様以外、誰もいない。 お姫様の乗るらくだが「ぐおー」と鳴き声を上げる。辺りはとても静かなので、その声はよく響いた。 お姫様は、手を伸ばして、らくだの首にかけられた振分荷物(ふりわけにもつ)を取る。 中には、コスメセットが入っている。彼女は、その中から、とっておきの高級化粧水を出して顔に塗った。 鏡を見た彼女は、さっきより大きなため息をつく。 「顔がパリパリでシワシワだわ」 「なに? なんか言った?」 前を行くらくだから、王子様が尋ねてきた。 「なんでもない」 皺が増えたことに、少なからずショックを受けたお姫様は、ぶっきらぼうに答える。 「女の子の日?」 お姫様がご機嫌ななめなので、王子様はそう思ったのだろう。 お姫様は心の中で舌打ちする。 なんてデリカシーのない人だろう。嫌いだわ……。 でも、今までもこれからも、らくだに乗って二人きりで旅をするしかないのだ。 何故なら、ここは空に浮かぶ月が綺麗な沙漠。 旅をするのは、王子様とお姫様と決まっているのだから。
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