月曜日

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 三澄さんは学年きっての数学オタク。  高校の範囲は中学生で既に独学を終えているらしく、彼女の机の上には常に、大学院レベルの分厚い専門書がたんまり積まれている。数学の授業中は常にそれを読んでおり、先生も彼女の実力は理解しているので特に咎めることはない。  というわけで、今日も先生の話なんて全く聞いていなかった三澄さんだけれど。  黒板に目をやるなり、複雑怪奇な問題文を一瞬で読み解いて、ひとこと。 「√3-2i」 「正解だ。途中式の説明もできるか?」  淀みない口調で計算過程を説明した三澄さんに対し、教室中が拍手を送る。 「さすが香織ちゃん!」 「三澄すげー!!」  クラスメートからの賞賛に関心を示すことはなく、彼女は再び机の上の専門書に目を落とした。  分厚い本の上でたゆたう黒髪。しなやかにペンを走らせる細い指先。  この世の真理を全て見透かしているかのような瞳。    さっき怒られたばかりだというのに、その横顔を見ると僕は、ただちに放心状態に陥ってしまう。   そして同時に、心臓が飛び出しそうな高揚感が体中を駆け巡る。  あの三澄さんが、今日僕に告白してくれるかもしれないのだ。  お昼休みにどっかに呼び出されるのかな? それか、放課後に一緒に帰る展開とか?   どんなふうに告白してくれるんだろう? 僕はどう返事したらいいんだろう?  授業はそっちのけ、脳内で妄想が無限大に広がる。  ——けれど結局その日、三澄さんからの告白はなかった。
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