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泣いている母さんを見て
心から申し訳ない気持ちになった。
『母さん… ごめん。ただいま。』
母さんは小さく頭を振り
『おかえりなさい… 優。』
と言って泣きながら微笑んでくれた。
懐かしい実家のリビング。
夕飯のしたくの途中だったのかいい匂いがする。
俺たちはダイニングテーブルに座り
ぎこち無いながらも少しづつ話をしていった。
俺は今までのこと、母さんは何も悪くないし全部自分のせいだと話す。
母さんはまた頭を横に振りあの時のことを
『あれは… お母さんのせい。
あのあと優がいなくなって何年も考えてた。』
『えっ… 』
『あの時、誰よりもあなた達の気持ちがわかったはずなのに… 自分のことしか考えてなかった。 私が二人の味方になって盾にならなきゃいけなかったのに…、ごめんね。』
違うよ。
俺に覚悟がなかったんだ。
母さんや実父のように大反対されても勘当されても何もかも捨ててまで貫こうとしなかった。
俺は里桜を思う振りをして居心地のいい、自分の周りの人達も失いたく無かっただけ。
ただの最低なヤツなんだよと言うと
『それは違う。お母さんはずっと小さい時から家族や親戚が嫌いだった。息苦しくて苦しかったときにあなたのパパが救い出してくれた。』
母さんを真っ直ぐ見る。
『私は… おばあちゃんや親戚ともお義父さんと再婚して全てが上手く回るようになった。それを壊されると思ってしまったの。最低だよね?
里桜ちゃんには本当に申し訳ないことを… 許されないことだと思ってる。』
俺も同じだよ。
ぬくぬくと育った俺はその環境から離れられなかった。里桜も一緒にその場所にいて欲しかったんだ…
でも里桜と別れて7年
俺はその場所を失い母さんも俺を失ったーー。
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