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夢は諦めなければ叶うもの
その男は大学生になりたかった。だが、その男の両親が入信している新興宗教団体の教義に「神の子は早く社会に出て、神に献金出来るようになりなさい、それは神が喜ばれます」と、あるために無理矢理就職させられてしまった。男は大学に進学を希望したのだが、両親の熱心な信仰心によってその意思を打ち砕かれたのだ。
男に信仰心は皆無。その新興宗教団体は神とされる者が「現人神」で、唯一絶対神の転生体であると言う荒唐無稽を極めたような「設定」であり、どうしても信ずるに値しないと考えたのが大きな理由である。
男が高校を卒業し、地元の工場に就職して以降は、最低限の生活費以外を全て献金に充てる生活を送っていた。この当時は給料全額手渡しの時代、給料日に家に帰るなりに両親に給料袋を取り上げられていた故に仕方のないことであった。男は独立を渇望していたのだが、一人暮らしのための賃貸住宅の保証人になれる者がおらずに独立は頓挫、親類縁者全てが新興宗教団体の信者であるために「独立せずに親元で暮らしながらの献金は誉」と逃げ道を絶たれてしまったのである。
結婚もしたが、相手は同じ新興宗教の信者の「お見合い結婚」で愛は皆無。だが、子供を儲けることで愛が芽生えるのであった。救いがあるとすれば、妻も信仰は皆無で「考え方」が似ていたことだろうか。
それから数十年後、事態が一変する。新興宗教団体の現代表が行う贅沢三昧の映像が動画サイトで公開されたのだ。筆舌に尽くし難い程の百花繚乱酒池肉林の宴の模様である。新興宗教団体は火消しにかかり「ディープフェイク」だの「対立団体の幻惑」だのと言い訳を並べたが、信じるのは「一部」の狂信者ばかり、大半の信者は「騙されていた!」と集団訴訟を起こすのであった。
そして、現代表は「詐欺罪」「強制わいせつ罪」等で訴えられ逮捕。カリスマを失った新興宗教団体は解散命令を出され、全国民から石を投げられるかのように叩かれに叩かれ「詐欺団体」の刺青を刻み、宗教の評判を落とすだけ落とした末に消滅するのであった。
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