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あめふらし 2
ふふふ。
ねえ、君は思いもよらないでしょうね。
私が、こうして君がいつまでだったならば訪れてくれるのか、日々を数えているだなんて。
ねえ、君は思いもよらないでしょうね。
家族が、そろそろ私を諦めた方が良いと、担当の医師から説得されているだなんて。
…いつまで、会えるかな。
管のたくさんつけられた、内側を上向きにされた腕の先で、何かぬくいものが手の平を握る感触に、生きている心臓が跳ねる。
脳みそはダメになってしまったから、細かい記憶や緻密で小難しい感情は理解しかねる。
それでも、温度と言うものはとてもダイレクトに命を伝えて来るもので、彼が生きていると感じると喜びに皮膚が泡立った。
そう、私は彼が誰なのか知らない。
けれど、毎日会いに来てくれて、私の名を呼んで指を絡める。
兄や弟、恋人や親しい友人。
一体どれが正解?
「…俺、亜由美のところへ、行こうかなあ」
『私は、ここにいるでしょう、どこに行くと言うの』
「…嘘をついてごめん。今日は一日雨だったよ」
『知っていたから、気にしてない』
「きっと明日は、晴れるから」
『…泣かないで』
― それでも、私の身体は動かない。
「全部、良くなるからね」
『全部、良くなるからね』
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