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今日は隆史と、駅前の創作居酒屋に来ていた。いつものファミレスや喫茶店とは違い、個室のある、ちょっと高めの居酒屋だ。
「昨日の答えだけど」
彼のビールと私のカクテル、そして、お通しが来たところで、私は口を開いた。
「ここに100万円があるの」
私は鞄から封筒を出す。それは、ずっしりと重かった。
「ああ、ありがとう。本当に助かるよ」
隆史はホッとした声を出す。
「2つ、条件があるの」
「条件?」
隆史の顔が曇る。
「うん。今から言う条件を聞いてくれるなら、100万円を貸そうと思う」
「分かった。そりゃあ100万円という大金を貸してもらうんだから、それなりの条件を聞かないとね」
彼がニコリと微笑む。
「まず1つ目の条件は……」
私は大きく息を吸う。
「絶対に、これで夢を叶えてほしいの」
少しの間があって、彼は「分かった」と答える。
「絶対に成功させるよ」
「2つ目」
私は唾を飲み込む。そして、めいいっぱい息を吸い、口を開いた。
「このお金は、貸すんじゃなくて、全て隆史にあげようと思うの」
私の言葉に、隆史の表情が固まる。
「え、そんな、もらうなんて悪いんじゃないかな」
私は首を横に振る。
「隆史の仕事が上手くいくなら、このお金を全て使ってほしい。返そうなんて思わなくて良いから」
また沈黙が続く。しばらく隆史の目が左右に泳いでいたが、やがてこちらを向く。
「分かった。本当にありがとう。絶対にこのお金で、夢を叶えるよ」
隆史はそう言って、優しく微笑んだ。いつもの、暖かな彼の表情、それを見るだけで、私は幸せだった。
「うん。約束だよ」
私は精一杯の笑顔を見せた。
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