チェーン・ラブ

7/9
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
今日は隆史と、駅前の創作居酒屋に来ていた。いつものファミレスや喫茶店とは違い、個室のある、ちょっと高めの居酒屋だ。 「昨日の答えだけど」 彼のビールと私のカクテル、そして、お通しが来たところで、私は口を開いた。 「ここに100万円があるの」 私は鞄から封筒を出す。それは、ずっしりと重かった。 「ああ、ありがとう。本当に助かるよ」 隆史はホッとした声を出す。 「2つ、条件があるの」 「条件?」 隆史の顔が曇る。 「うん。今から言う条件を聞いてくれるなら、100万円を貸そうと思う」 「分かった。そりゃあ100万円という大金を貸してもらうんだから、それなりの条件を聞かないとね」 彼がニコリと微笑む。 「まず1つ目の条件は……」 私は大きく息を吸う。 「絶対に、これで夢を叶えてほしいの」 少しの間があって、彼は「分かった」と答える。 「絶対に成功させるよ」 「2つ目」 私は唾を飲み込む。そして、めいいっぱい息を吸い、口を開いた。 「このお金は、貸すんじゃなくて、全て隆史にあげようと思うの」 私の言葉に、隆史の表情が固まる。 「え、そんな、もらうなんて悪いんじゃないかな」 私は首を横に振る。 「隆史の仕事が上手くいくなら、このお金を全て使ってほしい。返そうなんて思わなくて良いから」 また沈黙が続く。しばらく隆史の目が左右に泳いでいたが、やがてこちらを向く。 「分かった。本当にありがとう。絶対にこのお金で、夢を叶えるよ」 隆史はそう言って、優しく微笑んだ。いつもの、暖かな彼の表情、それを見るだけで、私は幸せだった。 「うん。約束だよ」 私は精一杯の笑顔を見せた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!