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「お金を貸してほしいんだ」
昼下がりのファミリーレストラン、目の前に座る隆史が、少し困ったような表情でそう言った。
このセリフを聞いたのは、もう何回目だろうか。
「いくら、必要なの?」
私は彼に尋ねる。
「3万円あれば大丈夫だと思う」
「分かった」
私は財布の中からお札を3枚取り出す。
「はい」
私が差し出したお札を受け取り、「いつも悪いな」と申し訳ない顔をする。
「今の事業が成功したら、絶対に返すから」
彼は強い口調で言った。そのセリフも、幾度となく耳にしてきた。
「うん。気にしなくていいよ」
私は笑顔を作る。そう、彼の事業が成功するまでだから。自分にそう言い聞かせた。
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