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桃香はヒロミの胸に真っ直ぐ飛び込んだ。
勢いで花束が大きく揺れて桃の香りが辺りを包んだ。
「ヒロミ・・」
「・・・桃香」
2人の気持ちが一つになるハグの途中で不意に桃香がヒロミを見上げた。
「いつから私のとりこなの?」
桃の花の花言葉はあなたのとりこである。
「秘密」
「ずるーーい!」
地団駄を踏む桃香を無視して
「俺のこと嫌い?」
と、ヒロミが聞いてきた。
頬をぷくっとピンクに染めた桃香が首を振った。
「え? 嫌いなの?」
ヒロミが身を引くと、慌てて引き寄せて
「・・・好き」
途端に勝ち誇った顔でニヤついたヒロミが
桃香を見下ろしている。
ムッキーーーーっ桃香が飛び跳ねて悔しがって
「ヒロミは?ヒロミはどうなの??」
「秘密」
「ずるーーーーぅい!!」
と、門扉がぬらっと開いて車が出てきた。
運転席の窓から、身支度を整えた摩訶ねえが顔を出すと
「ヒロミくん。彼氏になれたのかしら?」
と、意味ありげに微笑んで行ってしまった。
「何?何?今の?!」
子猿のように飛び跳ねる桃香を引き寄せたヒロミは
急に真顔で見つめると
「桃香の彼氏になりたいって言ったから・・」
なんて甘い・・
低く優しい声はいつまでも耳を震わせ
桃香を見つめる澄んだ瞳は胸の高鳴りを誘う。
「・・・ヒロミ・・」
ヒロミの温もりが桃香の温もりと溶け合・・・
と、摩訶ねえの車が戻ってきて2人の脇で止まった。
「病院から呼び出しきてるけど・・まだ、かかりそう?」
「もう少し・・」と、
抱きつくヒロミの言葉を遮るように顎に手を押し当てて
「いくいく。行きます。」
のけぞりながら桃香は摩訶ねえに手を振った。
「素敵なスカーフが見つかるといいわね!」
言葉の語尾が引っ張られるように車と共に小さくなって消えていった。
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